トーキョーラブストーリー

18歳で上京(千葉)。学生のうちは行くたびにその巨大さが刺激的だったが、年を重ねるにつれてライブの時しか行かない近くて遠い場所になっていった。わざわざ東京へ出向かなくても完結する日々が多くなる。渋滞、満員電車、人ごみ。巨大な東京が持つ巨大なもの全てをネガティブに感じるようになった。

それでも人がいなくなったAM2からAM4あたり真夜中の東京は好きだった。

 

ふとしたきっかけで観たくなり、DVDを借りてきて一気に視聴。

放映されたのは1991年の1月から3月。今から22年も前だ。

当時最先端だったメイク、髪型、衣装、肩幅。ティッシュの箱は現在の3倍くらいの高さ。500mlのコカコーラの缶ばりの巨大な家庭電話のワイヤレス子機。缶にひっかかる方式を採用される前の取り外すプルタブ。禁煙社会の今とは違いタバコを吸うシーンもやたらと多い。職場でも普通にデスクに灰皿が置いてある。そんな情景に懐かしさも感じるし、同時に違和感を感じる。

携帯電話やメールの「今どこにいるの?」で解決するすべての物語。時間を決めて待ち合わせるが故の悲劇。当時はそれが当たり前だったが、20年の時間の重みを強烈に感じた。

当時建設中だったレインボーブリッジが映るシーンがある。僕は知らないけどそんな時代が確かにあったんだよなあ。東京スカイツリーも出来ていく過程を僕は少しだけ知っているが、これから東京に出て行く人たちは完成した姿しか知らない。東京タワーの時も東京駅の時も同じだろう。東京はどこよりも速いスピードで流れていく。

 

当時このドラマを見た何も知らない僕は何も知らない「東京」に過剰な期待感を抱いていたと思う。現実は絶対に違うと当時も認識はしていたはずだが、心のどこかに東京とはこういう場所であってほしいという淡い憧れもあったはずだ。

残念ながら「トレンディー体験」は皆無。お洒落なバーに酒を飲みにいくことなんて、5本の指で数えるほどもない。都心のオフィスでお洒落に働くこともなかった。最も憧れていた夜の東京の街を全力疾走することもなかった。主人公達と同じ24歳当時の僕は生活に追われ、夢を追いたくてもその追い方がわからず悶々としていた。現実は非常に残酷である。

結局二十年も関東にいて東京タワーにも一度も登らなかった。余裕がなかったんだな。残念。

 

肝心のドラマの内容だが冷静な大人の目で見ると、決断力のない男達が右往左往する物語にしか見えなかった。それに比べて唯一主人公の赤名リカのみが強烈に自分の意志でつき進んでいくのが救いだった。終止ぶれないのは彼女だけである。ぶれない男「矢沢永吉」、ぶれない女「赤名リカ」で間違いない。

鈴木保奈美ちゃんの演技と容姿の美しさは圧倒的。これをパッケージングできたことは本当に素晴らしいことだ。

終止冷静に批判的な目で見ていたはずだがいつのまにか引き込まれてしまい、最終回はまんまと高校時代の僕と同じ精神状態に戻り、切なくやりきれない気持ちになった。どれだけ冷静な気持ちで観ようとしても心動かされてしまう。ハッピーエンドではない悲しい話ではあるがやはり愛すべき名作である。大人になるのは勝手だが、全ての感情を封じ込めて醒めてるんじゃないよと喝を入れられた。

関東生活二十年のおかげで、「あ、これはあの辺りね」となんとなくトレンディーな気分で鑑賞することができるのは高校生当時とは違う楽しみだ。上京したのは間違いではなかった。

 

インターネットで調べると今でも隠れファンがいて、東京都内のロケ地を訪れたりしているらしい。次回東京に行ったときはせめて、代々木公園内にある「カンチ&リカいつまでたっても帰れないね」スポットに立ちあの最高にトレンディーだと思っていた瞬間を疑似体験し同じ時代を生きた証とし、生きるということに必死であっさりと失われた20年への決別としたい。

 

僕の物語は最先端の流行発信スポット東京を離れ、現在は幕末に最先端の思想を育てた舞台へ。ここで中身を磨こうと思う。

そしてまたいつかトレンディーな街を全力疾走するにふさわしい男になる予定である。

 

1991年の音楽

Nirvana / Never mind

Red Hot Chili Peppers / Blood Sugar Sex Magik

Metallica / Metallica

Guns N' Roses / Use Your Illusion1,2

Ozzy Osbourne / No More Tears

Green Day / 1039 / Smoothed Out Slappy Hours

Operation Ivy / Energy

小田和正 / ラブストーリーは突然に